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ホンダ・スポーツの原点は『S』だ。
1962年のS36O/S5OOに始まり、
S6OO、S8OOまで発展したこのスポーツカーは、
当時のホンダの個性や新機軸が盛り込まれていた。
そんな『S』の姿、ホンダ・スポ―ツの原点の思いは
レストアというかたちで現代に伝えられる…
第1回 ボディ基礎編はコチラ
第3回 メカニズム編はコチラ
第4回 完全復活編はコチラ
この特集は「ボンダ・スタイル」vol.9/6月18日発売(アポロ出版)に掲載された記事です。
アポロ出版「ホンダスタイル」 のページはコチラ。

美しさの決め手となるのは、狂いのないポディライン

前回、プラィマー(サビ止め)をボディ全体に吹き掛けて板金作業が完了し、ボディの基礎が完成したS800。続いて塗装の工程に入っていくわけだが、その前に行なわなければいけない大切な作業がある。ドア、トランク、ボンネット、ラジエーターグリル、ライトなどを一度すべて取り付けてみて、ボディの各部同士がきちんとマッチングしているか確認するのだ。表面だけがきれいに塗装を施してあっても、よく見るとバーツの組み合う部分に段差があったり、隙間があったりというS800が世間には多い。これは長い時間の経過や事故によってできた歪みがきちんと直されていなかったためだ。ガレージイワサでは、パーツを取り付けてみて合わない箇所がある場合、取り外してカタチを合わせ、また再度取り付けるという作業を何度も根気強く繰り返す。ドアなどは取り付け、取り外しを20回位繰り返すこともあるのだという。

ボディの歪みがないことを確認したら一度パーツを取り外し、ボディ表面の小さなひずみをパテで修復、それからボディ全体にサーフェイサーを吹き掛ける。サーフェイサーは塗料の肌を滑らかにするための下地剤だが、小さな傷を目立たなくする役割も果たす。これをさらに600〜1200番の水ペーパーで傷ひとつないように丹念に仕上げる。

傷がないか、ドア、トランク、フェンダーアーチなどのラインは正確か確かめたところでいよいよ塗装だ。ムラができないように仕上げなければいけないので、全塗装は一発勝負。ボディ全体に今回の希望のカラーである赤い塗料を丁寧に吹き付けていく。入念に下地作りをしたため、新車のように美しくボディが輝きを取り戻した。

事故の影響を受けた足回りは慎重に修正していく

続いて足回りに取りかかるが、フレーム(シャシー)部分のサビはひどい。これはクルマの下部になればなるほど水がたまりゃすいからだ。まずはしっかりとサビを落とすが、フレームについても事故ゃ経年劣化によってできた歪みを修正。修復しなければならない。前回のボディ板金の工程と共通して言えることだが、以前の事故などの影響をよく分析していかに正確に修復するかが大切だということだ。

このS800は大きな事故を経験しているため、フロント右側部分が1cmも曲ってしまっていた。これを1mmの誤差もないように慎重に修正、こうすることによって新車時にも増した走行性能を得ることができる。これにプライマー(サビ止め)を施し、黒の塗料できれいにペイントすればフレームは完成。

サスペンションも部品ごとに分解し、サビを取って黒くペイントする。アッパーアーム、ロアアームのボールジョイントなどが事故で曲っていないか、磨耗して減っていないか、経年劣化でガタガタになっていないかよく点検。これをグリスアップし、ブッシュ類を新品に交換して組み付ける。ブレーキ、マスターシリンダーその他もすべてオーバーホールした。

駆動系に関してもリヤアクスル、デフレッシャルギアのオーバーホールは、ベアリングなどを交換してピニオンギアの歯当たりも入念に点検しながら組み付けていく。特にデフの組み付けは経験でしか得ることのできない微妙な感覚が必要となり、熟練の技の見せ所だ。

そしていよいよボディとシャシーのドッキングだ。フレームとボディをマウントするマウントラバー(ゴム)は消耗品のため新品に交換。これによりボディに新たなる剛性感が生まれることとなる。
ドア、トランク、ボンネット、ラジエーターグリル、ライトなどが取り付けられ、ようやくクルマらしい姿になったS800。来月は遂にエンジンを搭載し、長い眠りから覚める予定だ。
前回までのおさらい
先月からガレージイワサで復活ヘの第一歩を歩み始めた1967年式S800。
ますはボデイの解体、板金作業が行なわれた。腐蝕した部分を解体、サビを落とし、丁寧に切りつぎするという繰り返しが根気強く続けられた。家でいうところの「土台作り」となるこのセクションでは1mmのズレも許されない。レストアするうえで最も重要な工程を終えたS80O、さて今月は…?

@ ドア、トランク、ボンネット、ラジエーターグリル、ライトなどを―度取り付けてみて、きれいに合わない部分や歪みがないかよく確認する。そのうえで塗装の下地剤となるサーフェイサーを吹き付ける。
A ボディ表面の小さなひずみをパテで修復する。
B 赤く塗装する前にピンクに塗装する。こうすることで赤の発色がよくなる。
CD 本番は一発勝負。丁寧にボディを全塗装する。
E フレームはサビやすい部分。よくサビを落としたらサビ止めを施し、黒くペイントする。
F 事故によりフロント右側部分は1cmも曲ってしまっていた。これを慎重に1mmの誤差もないように修正する。
G サスペンションやデフも部品ごとに分解ーサビを取り、黒くペイントする。
  H ボディとシャシーをドッキング。ボディに傷がつかないように細心の注意が必要だ。
I エクステリアパーツが取り付けられて、ようやくクルマらしい姿を取り戻した。あとはここにエンジンを向かい入れるだけ…

 ただし、このフードレッジバネルやロッカーパネルの溶接に取りかかる前に忘れてはいけないレストアの極意がある。オープンカーであるS800では特に言えることなのだが、修復中の振動でボディにゆがみができないように、ドア部分をバーで固定する。また、事故歴のあるクルマはフレーム修正機などのある水平が取れている工場で作業しなければ正確な修理はできない。 レストアにはこうしたことが大切な要素となってくる。

次にサビている部分の切りつぎ作業に入る。外から見てサビていないようでも内側はサビていることもあるし、また外側だけをサンドブラストなどしても何の効果もない。サビている部分はすべて切り取って、新しい鉄板で同じ形のものを作りつなぎあわせていく。

ステップパネル、フロアだけでなくフロント/リヤフェンダー、フロントマスク、バックパネル、トランクも新調した。鉄板むき出しのままだとすぐにサビてしまうため、プライマー(サビ止め)をボディ全体に吹き掛けて、飯金作業は完了だ。

このあと連載2、3回目でボディ塗装、ボディとシャシーのドッキング、エンジン・ミッションの組みつけ、エンジン搭載の行程を追っていく。レストア完了後にはS800の実走インプレッションも予定しているのでお楽しみに。
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